コーチングとは?意味や効果、学び方をわかりやすく解説【図解付き】

コーチングとは、対話によって相手の目標達成をサポートする手法です。コーチングを受けることで、自らの力で目標を達成できるようになります。また、経営者・役職者・管理職等の人材が抱えている、経営や事業の課題を解決したり、キャリアイメージや価値観を明確にする手助けにもなります。この記事ではコーチングの意味や効果、学び方、資格などを徹底解説します。

コーチングとは?

はじめに、コーチングの意味や英語、語源、歴史を紹介します。

コーチングの意味・概要

国際コーチング連盟日本支部(ICF Japan)によると、コーチングとは「対話を重ねることで、相手に柔軟な思考と行動を促し、ゴールに向けて支援すること」を意味します。[1]

簡単にいうと、「相手の自主性を重視し、課題解決や能力向上などを図るコミュニケーション」を意味します。

コーチングは、ビジネスや教育、医療、スポーツなど、あらゆる分野で活用されています。
この記事では、特に「ビジネス」の分野にフォーカスして解説します。

ビジネスにおけるコーチングの特徴・やり方

ビジネスにおいてコーチングは、「上司と部下」、「リーダーとチームメンバー」などの間柄において、相手(部下やチームメンバーなど)の能力・自主性を高めることや、目標達成を支援することを目的に実施します。
コーチング主体のマネジメントは「コーチング型マネジメント」とも呼ばれます。

なお近年は、専門知識を持つコーチが組織課題の解決をサポートする目的で、経営陣や管理職を相手にコーチングを行うケースが主流となりつつあります。

コーチングを行う際には、以下の原則を押さえることが重要です。

  • 課題に対する答えは相手の中に存在する
  • コーチは相手が答えを自発的に引き出すためのサポートに徹する
  • 人間の可能性は有限ではなく無限である

この原則に沿って、コーチングでは「相手が新しい視点やアイデア、選択肢に気づくことができるような対話を行うこと」が求められます。
具体的には、以下の流れでコーチングを進めます。

  1. 現在どのような状況に置かれているかを把握する
  2. 何が理想・目標なのかを明確にする
  3. 現状と理想の間にあるギャップを把握する
  4. ギャップが生じている原因と、目標達成に必要となる要素を洗い出す
  5. 理想に到達するまでの具体的な計画を立てて、それを実行する
  6. ここまでのプロセスを繰り返す(フォローアップ)

「対象者の自発性を重視すること」がコーチングの特徴であるため、一度の対話では受ける側が的確な答えに気づけない可能性もあります。
したがって、最初から答えを教えたり、行動を強制したりするのではなく、答えに気づくまで継続的に対話を積み重ねることで相手の「自己成長」を目指すことが重要です。

コーチングの英語

コーチングは、英語でcoachingと言います。

コーチングの語源・由来

コーチング(coaching)の語源は、英語の「coach(馬車)」にあります。[1]
馬車の役割は、人を目的地まで送り届けることです。
ここから派生して、現在では「人が目標(目的地への到達)を達成できるようにサポートすること」という意味でコーチング(coaching)という用語が用いられています。

コーチングの歴史・背景

コーチングが現在の意味で用いられるようになった契機は19世紀に遡ります。
まず1840年代に、イギリスの大学で受験指導を行う個人教師が「コーチ」と呼ばれるようになりました。
次いで1880年代には、ボート競技の指導者がコーチと呼ばれるようになりました。[2]
こうした経緯を経て、教育やスポーツの分野では「指導を行う人=コーチ」という使われ方が浸透しました。

1959年には、ハーバード大学で教鞭をとっていたマイルズ・メイス氏が著書「The Growth and Development of Executives」で、「マネジメントにおいてコーチングは重要なスキルである」と記したことにより、初めて現在の意味で「コーチング」という用語が用いられました。[3]

そして1995年にはアメリカで世界的なコーチング機関である「International Coach Federation(ICF)」が設立[4]、1997年には日本初となるコーチ養成機関である「コーチ・トゥエンティワン(現:コーチ・エィ)」が設立[5]され、これ以降は国内外で広くコーチングの技術が知られることになりました。

昨今、人材の多様性や経済のグローバル化、技術革新の爆発的進歩などの影響により、ビジネスを取り巻く環境は激しく変化しています。
それに伴い、予想外の状況に直面するケースが増え、過去の成功体験や画一的な戦略・施策は通用しなくなっているのが現状です。

こうした環境下においては、経営陣や上司からの指示に従うだけの人材よりも、自発的に状況判断や判断に基づいて行動できる人材の方が、より高いパフォーマンスを生み出せます。

以上の背景より、企業では臨機応変に対応できる人材の確保・育成が重視されており、その手段として自発性の向上を期待できるコーチングの需要が高まっているのです。

また、国籍や年齢、職歴といった面で人材の多様化が進んでいることも、ビジネスにおいてコーチングのニーズが高まっている理由の1つです。
コーチングでは1人ひとりに合った目標達成のサポートを行うため、人材の多様化が進む企業の「個々人に応じた人材育成を行いたい」というニーズに適っていると言えます。

[1]コーチングについて(国際コーチング連盟 日本支部)
[2]コーチングの始まりとその歩みへの一考察(山本 淳平)
[3]The Growth and Development of Executives(Amazon)
[4]History of ICF(ICF)
[5]沿革・歴史(コーチ・エィ)

コーチングの活用場面・使い道

コーチングは、主に以下4つの場面で活用されます。

  • 人材育成
  • 経営陣や管理職の課題解決
  • チームやプロジェクトのマネジメント
  • 業務の効率化・組織改革

以下では、それぞれの使い道をくわしく解説します。

人材育成

コーチングは、経営者候補や女性リーダー、マネージャー(管理職)などの人材を育成する手段として活用されます。
具体的には、以下の場面でコーチングが役立つでしょう。

  • リーダーシップを開発したい場面
  • 1on1マネジメントのスキル向上を図りたい場面
  • 対象者の強みや潜在能力を活かした新規事業立ち上げ、企画立案を任せたい場面

特にコーチングは、「緊急性は低いものの、重大な課題・目標を達成したいケースある程度のスキル・経験を有する人材を育成したいケース」などに適しています。
こうしたケースに該当する場合は、積極的にコーチングを人材育成に役立てることがおすすめです。

経営陣や管理職の悩み・課題解決

経営陣や管理職の方が悩みや組織課題を解決する手段としても、コーチングを活用できます。
経営陣や管理職の方にとって、会社の売上や成長に関する悩みや課題は尽きないものでしょう。
こうした悩み・課題に対する答えは、第三者に相談しにくい上に、簡単に出てくるものではありません。

傾聴や質問力に長けたコーチと対話することで、自身および自社の強みや価値観、目指す方向などを頭の中で整理できます。

頭の中が整理されることで、悩みや課題の解決を図る上で必要な要素に気づくことができ、具体的な行動に移せるようになるでしょう。

チームやプロジェクトのマネジメント

新規事業などのプロジェクトに取り組む際、得意とする分野や国籍、年齢などのバックグラウンドが異なる人材が集まってチームを組むケースは少なくありません。
多様性があるチームにおいて、リーダーが一方的に指示を出す旧来のマネジメント方針は適さない恐れがあります。
なぜなら、画一的な指示を与えると、各々の考え方や強みが尊重されない可能性があるためです。

一方でコーチングの考え方を取り入れると、ダイバーシティを重視したマネジメントが実現されるため、各人材の自主性や強みを最大限活かすことができます。
そのため、各々が主体的に行動し、よりスピーディーにプロジェクトの成果を得やすくなります。
また、各々の強みが発揮されることで、革新的なアイデアや技術が生み出され、競合他社に対して競争優位を確立できる可能性もあります。

業務の効率化・組織改革

コーチングは、チームや会社全体の現状改善にも役立ちます。

たとえばコーチングによって受ける側の主体性や意欲を高めることで、より効率的に業務プロセスを遂行できる可能性があります。

また、組織全体の考え方や構造を変革する「組織変革」の手段としても役立ちます。

「各自が上司からの指示待ちになっている」、「社内全体が間違った方針や戦略に固執している」などの状況に陥っている場合、行動を起こさないと悪い状況は改善されず、更なる悪化の一途を辿るおそれがあります。

そこで必要となるのが組織変革です。
組織変革を行う際には、ハーバードビジネススクール名誉教授のジョン・P・コッターが著書で提唱した「組織変革を遂行する8つのプロセス」の理論[6]が参考になります。

この理論では、「従業員の自発を促すこと」を組織変革を行う上で重要なプロセスの1つとして位置付けています。
素晴らしいビジョンや戦略を打ち立てても、従業員(部下)が従来と同じ価値観を持ち、指示待ちのスタイルを維持した場合、リスクや面倒を回避し、大胆な組織変革は実行されないおそれがあります。
一方で従業員が自発的になった場合、従来とは異なるアイデアの創出・実行が可能となり、結果的に大規模な組織変革を実現しやすくなるでしょう。

コーチングのスキルは、組織変革に不可欠な「自発を促すプロセス」において、自発性の向上を遂行する具体的な手段となるのです。

[6]企業変革力(Amazon)

【関連記事】コーチングを受ける流れ、効果、サービスの選び方【事例も紹介】


コーチングとティーチング・カウンセリングとの違い

コーチングと似た概念に「ティーチング」と「カウンセリング」があります。一見すると似ていますが、それぞれ目的や活用方法などに違いがあります。この章では、各用語の意味とコーチングとの違いを紹介します。
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ティーチングとの違い

ティーチング(teaching)とは、「知識や問題の解決方法などを相手に教えること」[7]を意味します。

ティーチングは、最初から直接答えを教えるため、短期間で期待している効果を得られます。
ただし、「受け手の主体性向上を期待できない」点がデメリットとなります。

ティーチングは業務の具体的な方法やマナーなど、答えが明確な内容を教える場合に適しているでしょう。

コーチングとティーチングにおける最大の違いは「答えに到達するまでのプロセス」です。対話の相手が自ら答えに気づくコーチングと異なり、ティーチングでは自分から相手に対して答えを一方的に提示します。

その他にも、コーチングとティーチングには以下の違いがあります。

コーチング ティーチング
目的 相手(経営陣や部下など)の自立・成長を促進 知識や技術の伝達、課題解決・目標達成
コミュニケーションの特徴 相手の自主性を尊重、双方向的な対話を重視、長期で継続的に実施、1対1で実施(個別対応を行う)が主流でグループで行う場合もある 伝わりやすさを重視、一定の正解がある内容をスムーズに伝達する場合に有効、複数人相手に実施する場合も多い
具体的に行うこと 質問、傾聴、フィードバックなど 具体例の提示、アドバイス、指示など
必要となるスキル 傾聴力、質問力、承認力 教えることに関する専門知識・技術

【関連記事】コーチングとティーチングの違いは?

カウンセリングとの違い

カウンセリングとは、対話により相手が悩んでいること・困っていることを解決する手法です。[8]

カウンセリングでは、主に心理の専門家が相手の話を傾聴・受容しながら、心情や状況の理解に努めることで、相手が主体的に問題を解決できるようにサポートします。
この点はコーチングと共通です。

一方で、実施の目的に違いがあります。コーチングでは、主にビジネスやスポーツなどの分野において、「相手の自立・成長の促進」を目的とします。
一方でカウンセリングでは、医療や心理学の分野において、「患者やクライアントに対する精神面での寄り添い・気持ちの改善」を目的とします。

コーチングとカウンセリングの違いをまとめると以下のとおりです。

Head コーチング カウンセリング
分野 ビジネス、スポーツ、教育など 医療がメイン
目的 相手の現実的な問題解決や目標達成、自立的な成長のサポート 相手の心理面での問題解決や自己受容のサポート
コミュニケーションの特徴 相手のプラスな部分を伸ばす 相手のマイナス部分に対して受容や変容を促す

[7]teachingとは(Weblio)
[8]カウンセリング(厚生労働省)

コーチングに必要となるスキル

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コーチングを行うコーチには、主に以下7つのスキルが求められます。

  1. 質問
  2. 傾聴
  3. 承認
  4. ペーシング
  5. フィードバック
  6. 提案
  7. 要望

今回は、特にコーチングの根底となる「質問」、「傾聴」、「承認」という3種類のスキルをくわしく紹介します。

質問

コーチングにおける「質問」とは、相手が主体的に気づきを得られるような質問を意味します。
したがって、普通の会話における質問とはいくつか異なる点があります。
この項では、コーチングにおける質問のポイントを2点解説します。

相手への非難につながる質問をしない

コーチングの際に相手が批判されたと感じた場合、「萎縮して対話が円滑に進まない」、「言い訳ばかり考えて成長につながらない」などの事態になるおそれがあります。

したがって、相手が非難と受け取るような質問ではなく、主体的に内省できるような質問を行う必要があります。具体的には、「なぜ(Why)」を使った質問を避けて、「何(What)」や「どのような(how)」を使いつつ客観的に問題点を内省できる質問を行うことが効果的です。

以下3つの質問文を例として考えてみましょう。

  1. なぜ会議に遅刻したのか?(why)
  2. 会議に遅刻した要因は何だと思う?(what)
  3. どのような理由で会議に遅刻したと思う?(how)

1の質問は相手を非難するニュアンスが強いですが、2と3の質問は否定的なニュアンスがないため、相手は客観的に問題点を考えることができるでしょう。

オープン・クエスチョンの形式で質問する

質問の形式は、大きく以下の2種類に分けることができます。

  • クローズド・クエスチョン:選択肢があり、答えの数が限定されている質問
  • オープン・クエスチョン:選択肢がなく、回答者が自由に答えを考えることができる質問

たとえば「はい」と「いいえ」のいずれかで回答できる質問と比べて、「何が原因だと思う?」といったオープン・クエスチョンの方が回答の候補は多いため、前者よりも頭を使って答えを検討してもらえます。
そのため、コーチングの相手に対して、より深い内省を促すことが可能となります。

傾聴

傾聴とは、「相手の話を深い部分まで聴くこと」と「相手の話し方や表情、姿勢に注目すること」を両立することで、相手を徹底的に理解する手法です。
「単純に話をしっかり聞くこと」との違いとして、傾聴には以下2つの特徴があります。

  • 受容:ありのままの相手を受け入れる
  • 共感:相手の話に対して同意する(できる限り相手の話を理解しようとする)

具体的には、話の内容だけでなく相手の表情仕草、現在に至った背景の物語などに興味を示し、相手を受け入れる姿勢で対話することが重要です。

傾聴することで、コーチングを受ける相手には以下2つのメリットがあります。

  • 自分自身の価値観や考え方、強みに対する理解が深まる
  • 積極的かつ自主的な言動が出やすくなる

また、相手を受け入れる姿勢を示すことで、対話する両者間で信頼関係を構築できます。

承認

コーチングにおける承認とは、相手の成長や変化、成果にいち早く気づいて伝えるスキルです。

成長や変化を伝えることで、相手は自らの成長や変化に気づけるため、「達成感」や「目標達成に向けた行動力の向上」を期待できます。
また、承認をコーチングのプロセスに取り入れることで、「対話相手との良好な関係性の確立」や「相手自身の能力向上」といった効果も期待できます。

コーチングでは、以下3つの視点で相手を承認することが重要です。

存在そのものを承認する

コーチングでは、相手が存在していることを具体的な事実として伝える(承認する)ことが重要です。

たとえば、相手の特徴やセッションを行う日の状態を観察し、見たままの事実を伝えることが当てはまります。
心理学の分野では、人の自尊感情を育てるには人からの働きかけが重要と言われています。
そのため、具体的な事実を相手に伝えるだけで、相手の自尊心を高める効果が期待できるのです。

存在を承認するためには、好奇心を持って相手のことを観察することが重要です。
「相手に関心を払い、些細なものも含めて特徴を見つけ、それを伝える」ということを繰り返すことで、相手の自尊心が高まり、自発性の向上や行動につながります。

変化・成長を的確に承認する

相手の変化や成長を的確に伝えることも大切です。

たとえば、明確に成長した部分があれば、その旨を客観的な事実として伝えましょう。

また、良い部分だけではなく、変化したという事実をそのまま伝えることも重要です。
事実を事実として受け止めることで、相手の自尊心や自発性を高める契機となるのです。

成果を聞き出す・言語化する

対話の過程で、相手の成果を聞き出すこともポイントです。
成果を聞き出す過程で、相手は自らの成功体験を言語化するため、モチベーションや自尊心の向上を期待できます。

成果を褒める(評価する)のではなく、質問や傾聴を通じて、相手が自らの成功体験を言語化する(成功体験に気づく)ためのサポートに徹することがポイントです。

ビジネスにおけるコーチングの効果・メリット

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ビジネスでコーチングを活用すると、以下6つのメリットを期待できます。

  1. 自発性や思考力、学習能力などを高めることができる
  2. 業務の生産性や業績の向上を期待できる
  3. 社内のコミュニケーションを活性化できる
  4. 相手との信頼関係を強化できる
  5. 従業員の満足度やワークエンゲージメントの改善を期待できる
  6. 経営やマネジメントの悩みを外部の第三者に共有できる

各メリットを詳しく見ていきましょう。

自発性や思考力、学習能力などを高めることができる

コーチングでは、対話を通じて相手が理想に到達する上で必要な要素(答え)を自発的に見つけ出すことを目指します。
そのため、コーチングを継続的に行うことで、管理職や経営陣、部下などの自発性や思考力、学習能力を高めることが可能です。

また、相手が自覚していなかった自身の強みや潜在能力を引き出す効果も期待できます。
こうした強みや潜在能力を業務で発揮することで、会社の売上や利益の増加につながる可能性があります。
また、相手自身のキャリアアップにもつながります。

業務の生産性や業績の向上を期待できる

コーチングによって自発性や思考力などが高まることで、受けた側は業務に対して主体的に取り組むようになったり、自らの頭を使って業務やプロジェクトの課題に取り組んだりするようになります。

業務に積極的・主体的に取り組むことで、業務の生産性が向上し、コスト削減や成果物の品質向上といったメリットを期待できます。
また、売上向上や新製品開発などに関する提案やアイデアが続々と生み出されることで、業績の向上も期待できるでしょう。

社内のコミュニケーションを活性化できる

社内全体でコーチングを行うことで、自発性や思考力が高い社員が増えていきます。
会議やプロジェクトで積極的に意見を述べたり、意見交換を図ろうとしたりする社員が増えるため、社内全体のコミュニケーションが活発的になるでしょう

コミュニケーションが活発となることで、社員同士の結束力が高まります。
また、お互いの業務に対する理解も高まるでしょう。

相手との信頼関係を強化できる

コーチングでは、相手(部下など)との1対1でのコミュニケーションを継続的に行います。
そのため、コミュニケーションを繰り返す過程で、相手との信頼関係を強化できます。

信頼関係を強化することで、お互いが本音で意思疎通や意見交換を行いやすくなるため、従来よりも迅速に問題の解決やプロジェクトの遂行を実現できるでしょう。

従業員の満足度やワークエンゲージメントの改善を期待できる

前述のとおり、コーチングが社内で普及することにより、コミュニケーションの活性化や信頼関係の強化などを期待できます。

それにより、従業員の満足度やワークエンゲージメントの改善につながる可能性があります。

実際に、NataleとDiamanteによる論文では、コーチングの効果として「従業員満足度(employee satisfaction)の向上」が挙げられており、その効果は実証済みです。[9]

経営やマネジメントの悩みを外部の第三者に相談・共有できる

コーチングを受ける経営陣やマネージャーの視点で見ると、悩みを外部の第三者に相談・共有できる点がメリットとなります。

前述のとおり、経営者やマネージャーにとって悩みは尽きないものの、営業秘密や自社の経営戦略などに関わる部分であるため、第三者に相談・共有できずに悩み続けるケースは少なくありません。
実際にコンサルティング会社のジェイフィールが行った調査では、多くのマネージャーが「マネジメントの悩みを相談・共有できる場」を必要としていることが判明しています。[10]

外部のコーチングサービスを受ける場合、対話するコーチには守秘義務が課されます。
また、外部の第三者であるため、成果や行動に対する批判や責任を追及される心配もありません。
そのため、情報漏えいや批判される心配をせずに、自らの悩みを相談・共有できます。

悩みをコーチに打ち明けることで、気持ちにゆとりが生まれるため、前向きな気持ちで経営やマネジメントに向き合えるようになります。
また、対話を通じて自らがやるべきことが明確となり、スムーズに悩みの解決に向けて行動できるようになるでしょう。

[9] The Five Stages of Executive Coaching: Better Process Makes Better Practice(Natale and Diamante)
[10] 世代間ギャップと孤立に奮闘するマネジャーの実態調査を発表(ジェイフィール)

ビジネスにおけるコーチングのデメリット・注意点

メリットが多いコーチングですが、実施に当たっては以下3つのデメリット(注意点)があります。

  1. 効果を実感するまでに時間を要する
  2. マネジメントが複雑化するおそれがある
  3. コーチのスキルに成果が左右される

各デメリットの詳細をお伝えします。

効果を実感するまでに時間を要する

コーチングでは相手が自発的に答えを見つけ出すことを目標とするため、答えを一方的に教えるティーチングと比較して、効果を実感するまでに時間を要する傾向があります。

したがって、緊急性の高い業務・プロジェクトにおける人材育成には適さない恐れがあるでしょう。

マネジメントが複雑化するおそれがある

コーチングでは、1人ひとりの違いを理解しながら人材教育を行うため、短期的にはマネジメントの工数がかかり、上司や管理職の負担が増えてしまう場合があります。
また、コーチングの習熟度が低いマネージャーが誤った方法でコーチングを使うことで、逆効果を招く場合があります。

コーチのスキルに成果が左右される

コーチングを行うコーチには、傾聴や質問などのスキルが必要です。
こうしたスキルが不十分だと、対話を通じて相手が答えを見つけ出すサポートを適切に行えないリスクがあります。

コーチングの導入事例・受けた人の感想

実際にコーチングを導入した企業を2社取り上げ、導入の効果と実際にプロコーチのサービスを受けた人の感想を紹介します。

メルカリ

メルカリでは、社員のエンゲージメント強化を目的として、執行役員やマネージャー層を主な対象としたコーチングを導入しました。
コーチングを導入したことで、「組織内のパフォーマンス向上」や「自己成長の実現」、「自己認知力の向上」といった効果が実現されました。

プロコーチによるコーチングを受けた同社社員からは、主に以下の感想が挙がっています。[11]

  • 問題解決への姿勢が前向きになった
  • アクションが明確となり、パフォーマンスが向上した
  • 振り返りサイクルによってストレスが軽減した

パナソニック

コーチングの導入前、パナソニックでは人材の多様化を図ったことで、部下との接し方に悩むマネージャーが出てきたり、従来のやり方が通用しなくなったりしていました。
こうした課題を解決する目的で、同社は部長や課長などのマネジメント層を対象に、コーチングを導入しました。

コーチングの導入により、マネジメント層の悩みや思考が整理され、リーダーシップを発揮できるようになりました。

実際にコーチングを受けた社員からは、主に以下の感想が挙がりました。[11]

  • 迷いが減ったことで、行動のスピードが上がった
  • メンバーの話を聞くスキルが高くなり、採用力が向上した
  • 部下に対して自分の考えを自信を持って伝えられるようになった

[11]事例紹介(mento for business)

コーチングの成果が出ない理由・対策

コーチングを実施しても、想定していた成果を出せないケースがあります。
この場合、理由として以下の3点が考えられます。

  1. コーチとしての立場を果たしきれない
  2. コーチングのスキルが不足している
  3. コーチングが機能しにくい状況である

この章では、理由の詳細と具体的な対策を解説します。

コーチとしての立場を果たしきれない

コーチ側(上司など)が自らの立場を果たしきれないことが原因で、期待していた成果が生み出されないケースは少なくありません。

たとえば上司が部下に対してコーチングを行う場合、上下関係や上司としての立場を重視するあまり、部下に対してダメ出しを行ったり、自らの希望に基づいたアドバイスを行なったりすることが想定されます。

コーチングでは、評価や指示、アドバイスなどを行わないことが原則であるため、ダメ出しやアドバイス等を行うと効果が低減するおそれがあります。
実際に、「上司が部下に対してコーチングを実施すると、コーチングの効果を得られないどころか、逆効果となる」という研究結果もあります。[12]

コーチングの成果を生み出すには、いかなる状況下においても、コーチ側が自らの立場を果たしきることが不可欠です。
困難である場合は、利害関係や上下関係のない外部の専門コーチに依頼することも選択肢となるでしょう。

コーチングのスキルが不足している

前述のとおり、コーチングのスキル不足は結果が出ないことに直結します。

コーチには、相手が思考を整理したり、答えを自発的に導き出したりするような傾聴や質問、承認のスキルが求められます。
これらのスキルを対話で活用することで、コーチングを受ける側は自発的に答えを見つけ出し、課題達成に必要な計画を実行できるのです。

したがって、コーチングで成果が出ない場合は、まずコーチのスキル向上に努めることが重要です。

コーチングのスキルは座学での学びだけでは身につきません。
トレーニングを継続的に行い、実際の対話を通じてインプットとアプトプットを繰り返し、熟練者からのフィードックを受けて、はじめてコーチングのスキルを習得できます。

「とりあえず話を聞いて、質問を繰り返せば良いだろう」などの考えを捨てることが、コーチングの成果を生み出す第一歩となるでしょう。

コーチングが機能しにくい状況である

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コーチングのスキルは万能ではなく、機能しにくい場合もあります。
具体的には、受ける側が以下の状況にある場合、コーチングの成果は得にくいです。

  • 現状に満足しており、変化を求めていない
  • 十分なスキルや経験、能力がない
  • コーチとクライアントに信頼関係がない

変化を求めていない場合は、答えを導き出しても行動に移さなかったり、惰性で行動したりするため、コーチングの効果が弱くなるおそれがあります。

そして、スキルや経験等がないと、目標と意欲の両方があっても、具体的な行動計画を達成するプロセスでつまずく可能性があるでしょう。

また、コーチとクライアントの間に信頼関係がないと、クライアントが本音を話しにくいなどの理由で、コーチングの成果が表れにくいです。

上記のケースに該当する場合、ティーチングを実施したり、部下やマネージャーのスキルアップに注力したりするなど、別の方針を検討することが重要です。
信頼関係がない場合は、信頼関係の構築に努めるか、もしくは本音を気軽に話しやすい外部の専門コーチを起用することなどを検討するのがおすすめです。

[12]The Effect from Executive Coaching on Performance Psychology(Moen)

コーチングの導入にかかる費用・相場

コーチングの導入を検討している方に向けて、サービスの費用・相場を紹介します。

コーチングのサービス導入でかかる費用の概要

コーチングのサービスにかかる費用は、様々な条件によって異なります。
具体的には、主に以下の要因で異なります。

  • 対象者
  • サービスの内容
  • 1回あたりの時間
  • セッションの回数
  • セッションの場所
  • サポートの期間

たとえば一般的な個人向けのコーチングと比べて、経営陣や管理職向けのコーチングでは、コーチに求められる専門性やテーマのレベルが高いため、費用も高い傾向があります。
また、オンライン形式で行うものと比較して、対面形式で行うコーチングの方が費用の相場は高い傾向があります。

なお、コーチングに付随するサポート(メールでの質問など)に関しても、サービスによって料金の発生有無や金額は異なります。
コーチングのサービスを選ぶ際は、サービスの内容と金額を比較することはもちろん、付随するサポートの内容も確認しましょう。

【種類別】コーチングのサービスに関する相場

対象者の視点で見ると、コーチングの対象者によって価格の相場は異なります。
ここでは、3種類のコーチングについて概要と費用の相場を紹介します。

幅広い個人を対象としたライフコーチング

ライフコーチングは、仕事や人間関係など、幅広いテーマを対象としたものです。
ビジネスパーソンだけでなく、主婦や学生など、コーチングを受ける対象も多岐にわたります。

ライフコーチングの場合、1時間あたり数千円〜3万円がサービスを利用する際の相場です。
コーチングは1回きりではなく、半年〜1年かけて10回程度のセッションを受けることが一般的です。
したがって、総額だと5万円〜30万円程度が相場となります。

マネジメント層向けのビジネスコーチング

ビジネスコーチングとは、ビジネスパーソンを対象に、能力向上や目標達成などの支援を図るものです。
一般的には、外部の専門コーチを起用し、マネジメント層の人材を育成する際などに実施します。

マネジメント層向けのビジネスコーチングの場合、1時間あたり5万円〜10万円がサービスを利用する際にかかる費用の目安です。
契約期間中に10回のセッションを行う場合、総額で20万円〜50万円が相場となります。

エグゼクティブコーチング

エグゼクティブコーチングとは、経営陣やその候補者を対象としたサービスです。
会社や事業が抱える課題の解決や組織の成長など、ビジネスの成功に直結するテーマが取り扱われます。

エグゼクティブコーチングの場合、1時間あたり10万円〜30万円がサービスの利用で発生する費用の相場です。

契約期間中に10回のセッションを行う場合、総額で50万円〜200万円が相場となります。

コーチングの学び方

コーチングのスキルを習得するにあたっては、以下に挙げた4つのコツが重要です。

  1. インプットとアウトプットを繰り返す
  2. 他人とのコミュニケーションを通じてコーチングを実践する
  3. 自身に合う学習方法を選ぶ
  4. 資格取得を通じて客観的に実力を確かめる

それぞれのコツを具体的に見ていきましょう。

インプットとアウトプットを繰り返す

座学や研修でコーチングのスキルを学んだだけでは、実務で十分に役立てることは困難です。コーチングのスキルを身につけるには、学んだ知識をアウトプットすることが重要です。
アウトプットすることで、1つひとつの知識を対話の中でどのように役立てるかを理解できるでしょう。

ただし、コーチングのスキルは簡単に身に付くスキルではありません。
1〜2回のインプットとアウトプットでは、コーチングでビジネスパーソンや経営者などの課題解決をサポートすることは難しいです。
何回もインプットとアウトプットを繰り返し、時間をかけて着実に技能を磨く必要があるでしょう。

他人とのコミュニケーションを通じてコーチングを実践する

前述したとおり、コーチングのスキルを習得する上では、インプットだけではなくアウトプットも行うことがポイントとなります。

コーチングの場合、他人とのコミュニケーションをアウトプットの手段とすることが重要です。
具体的には、部下や同僚と会話する際に傾聴や質問などのスキルを実践したり、クライアントとの対話で新しく学んだ知識を活用したりする方法があります。

このように、コミュニケーションによって知識を学ぶことを「コミュニカティブ・アプローチ」といい、コーチングのスキルを実践的なレベルまで引き上げる上では非常に効果的です。

自身に合う学習方法を選ぶ

コーチングを学ぶ方法は様々であり、方法によってメリットやデメリットは異なります。
ご自身の状況や希望に応じて、最適な学習方法を選ぶことが重要です。
ここでは、主な学習方法の概要やメリット・デメリット(注意点)、取得までにかかる費用を簡潔に紹介します。

書籍

書籍を使って独学でコーチングスキルを身につける方法です。

メリット

  • 自分の好きなタイミングや場所で学習できる
  • 自身のレベルや目的に応じて必要な知識を習得できる
  • 他の方法と比べて知識習得にかかる費用が安い

デメリット(注意点)

  • アウトプットの機会を得にくい
  • 専門的な知識を十分に習得できない可能性がある

取得までにかかる費用

数千円〜数万円

セミナー

単発で行われている研修やセミナーでコーチングの知識を学ぶ方法です。

メリット

  • 実際にコーチングスキルの活用方法を体験できる
  • 分からない部分を質問できる

デメリット(注意点)

  • インプットとアウトプットを反復できない
  • 専門的な知識を十分に習得できない可能性がある

取得までにかかる費用

1回当たり数万円

スクールへの通学

スクールに通学し、コーチングのスキルを学ぶ方法です。

メリット

  • コーチングのスキルを体系的に学習できる
  • 実務で活躍しているコーチングのプロから学んだり質問したりできる
  • 実際の事例や書籍では得られない専門的な知見を知ることができる
  • 講師や仲間との対話を通じてアウトプットを繰り返し行うことが可能
  • 資格を取得できる

デメリット(注意点)

  • 一定の時間だけ同じ場所に拘束される
  • 書籍やセミナーと比べて費用がかかる
  • スクールによって学べる内容や費用、取得できる資格の種類などが異なるため、慎重に目的に応じたスクールを選ぶ必要がある

取得までにかかる費用

1コース修了までに10万円〜100万円

通信講座

Zoomなどのツールを使って、オンライン上でコーチングを学ぶ方法です。

メリット

  • 場所に縛られずに知識を学べる(通学が不要)
  • スケジュールを調整しやすい
  • 録音・録画した内容や共有資料を使って復習できる
  • 実務で活躍しているコーチングのプロから学んだり質問したりできる
  • 講師とのコミュニケーションを通じてアウトプットできる
  • 資格を取得できる

デメリット(注意点)

  • 通信環境が悪いと円滑に講座を受講できない可能性がある
  • 対面する場合と比べてコミュニケーションを取りにくい

取得までにかかる費用

1コース終了までに5万円〜10万円

資格取得を通じて客観的に実力を確かめる

コーチングは相手があってこそのスキルであるため、ひたすら学習を続けるだけでは、どの程度スキルが身についたかを自分自身で正確に判断することは困難です。
したがって、コーチングに関する資格取得にチャレンジすることがおすすめです。

コーチングの資格を取得するには、事前に定められた講座を受講したり、試験に合格したりする必要があります。
一定の知識水準がないと資格を取得できないため、合格することで客観的な実力を確認できます。

また、国内や世界的に権威ある団体が認定する資格を取得することで、対外的に自分自身の実力を証明できるようになります。
実力を証明することで、コーチとして安定的に仕事を確保できる可能性が高まると言えます。

コーチングの資格

コーチングの資格は、客観的に自身の技量を証明する上で役に立ちます。
また、資格を取得する過程でコーチングのスキルを基礎から網羅的に学べます。
この章では、コーチングの代表的な資格として以下の3種類を紹介します。

  1. 国際コーチング連盟認定資格
  2. 生涯学習開発財団認定コーチ資格
  3. CPCC®(Certified Professional Co-Active Coach)

国際コーチング連盟認定資格

国際コーチング連盟(ICF)が認定している国際的なコーチング資格です。

ICFは、1995年にアメリカで結成された世界最大級のコーチング団体であり、世界138カ国で31,490人が会員として所属しています(2019年現在)。
同組織は57カ国に拠点を置いており、下部組織として117支部の公認チャプターを抱えています。

なお日本では、「ICFジャパン」が国内で唯一ICF公式認定支部として活動しています。[13]

世界各国のコーチからは「ICFの会員であることはプロコーチとしての信頼に直結する」と高い評価を得ています。
実際にICFが2012年に行った調査結果には、同組織に所属するコーチについて、過去1年間でクライアントや収入が増えているという報告があります。[14]
以上より、ICFはコーチング業界で最も権威ある組織と言えるため、プロコーチとして本格的に活躍したい方には同組織の認定資格がおすすめです。

そんな同組織では、以下3種類の資格を認定しています。

  • アソシエイト・サーティファイド・コーチ(ACC)
  • プロフェッショナル・サーティファイド・コーチ(PCC)
  • マスター認定コーチ(MCC)

3種類ある資格における最大の違いは「取得までに必要となるトレーニング時間・コーチング経験」であり、ACC→PCC→MCCの順番で必要な時間や経験が多くなります。

その他の違いは以下のとおりです。

ACC[15] PCC[16] MCC[17]
難易度
必要なトレーニング時間 60時間以上 125時間以上 200時間以上
必要なコーチング実績 8名以上、100時間以上のセッション 25名以上、500時間以上のセッション 35名以上、2,500時間以上のセッション
国内の資格保有者数(2021年8月時点) 360名 333名 47名

また、いずれの認定資格でも、トレーニング時間や実績の要件を満たすだけでなく、原則としてコーチングの基礎知識を確かめるテストを受験し、合格する必要があります。
また、出願する資格の種類や方法次第では、実技審査も必要となります。

以上のとおり、ICFの認定資格を取得するまでには多大な努力を要します。
ただし、本格的に知識の習得やトレーニングを行うため、資格を取得する過程で実践的なスキルが身に付きます。
また、国際的に権威ある組織が認定している資格であるため、最も難易度が低いACCを取得するだけでもプロコーチとしての技能を対外的に証明できるでしょう。

生涯学習開発財団認定コーチ資格

一般財団法人 生涯学習開発財団が認定するコーチングの資格です。

1983年に設立された生涯学習開発財団は、「資格認定団体」の登録・支援事業や博士号取得支援事業などを行っている団体です。[18]

同団体では、「認定コーチ」、「認定プロフェッショナルコーチ」、「認定マスターコーチ」という3種類の資格認定を行っています。
いずれの資格に関しても、資格の認定試験に合格する必要があります。
また、認定試験を受けるには、「コーチ・エィが開催しているコーチングスキルを学ぶためのプログラムの受講」や「一定人数以上へのコーチング実践経験」などの条件を満たさなくてはいけません。[19]

2020年1月時点で8,200名以上が同団体の資格を取得しており、日本国内ではメジャーなコーチング資格の1つとなっています。[20]
「認定コーチ」の資格であれば約半年から1年での取得が目安となるため、初心者の方におすすめです。

また資格の取得過程では、先ほど紹介した国際コーチング連盟に認められたプログラムに基づいてコーチングの基礎を学ぶことができます。
そのため、ICFの認定資格を取得するための第一歩にもなるでしょう。

CPCC®

CPCC®(Certified Professional Co-Active Coach)は、CTIジャパンが提供しているコーチング資格です。
CTIジャパンとは、世界で初めて国際コーチング連盟からの認定を受けたプログラム(ACTP)を提供している機関の日本支部です。[21]

CPCCを取得するには、6ヶ月にわたる上級コースを受講し、かつCTIが実施する試験(口頭・筆記)に合格する必要があります。
また、上級コースの受講条件として、下記に挙げた全条件をクリアする必要があります。

  • 5種類のコース(基礎コース〜応用コース)をすべて修了する
  • 最低5人以上の有料クライアントを確保する
  • コースが始まるまでに、CPCCかつPCC以上を保持しているプロコーチをつける

上級コースでは、少人数制のプログラムを通じて、実用的なスキルを学ぶことが可能です。
取得難易度は決して低くないものの、プロコーチとして通用する知識と資格を取得できる点でおすすめです。[22]

[13]ICF JAPANについて(国際コーチング連盟 日本支部)
[14]FAQ(国際コーチング連盟 日本支部)
[15]ACCアソシエイト・サーティファイド・コーチ(ICF Japan)
[16]PCCプロフェショナル・サーティファイド・コーチ(ICF Japan)
[17]MCCマスター認定コーチ(ICF Japan)
[18]事業内容(生涯学習開発財団)
[19]認定試験の概要と申請条件(コーチ・エィ アカデミア)
[20]生涯学習開発財団認定コーチ資格(コーチ・エィ アカデミア)
[21]会社案内(CTIジャパン)
[22]上級コース(CTIジャパン)

コーチングを学ぶ上でおすすめの本

最後に、コーチングを学習する際におすすめの書籍を3冊取り上げ、それぞれの概要やおすすめのポイントを紹介します。

この1冊ですべてわかる 新版 コーチングの基本

新版 コーチングの基本は、先ほど紹介したコーチ・エィの代表による著書です。

この本では、コーチングの定義や原則、プロセス、コーチに必要な視点・スキルなどが、わかりやすい図解を用いて解説されています。
また、組織開発の手段としてコーチングを導入している企業の事例も紹介されています。

コーチングの基礎を網羅的に学べることや事例が豊富なことから、2009年の発行から10年以上にわたり、業界内外から高い評価を得ています。

コーチングを基礎から学びたい方、コーチングの導入前に事例でイメージを深めたい方におすすめの一冊です。[23]

図解 コーチングマネジメント

図解 コーチングマネジメントは、国際コーチ連盟マスター認定コーチの資格を持つ伊藤氏による著書です。

この本の特徴は、「組織課題の解決」という視点からコーチングの理論から実践に役立つ内容を網羅的に解説していることです。
「決めたことを実行できない」、「頭でわかっていることを行動に移せない」といった組織課題を、コーチングのスキルを使って解決するヒントがわかりやすく紹介されています。

コーチングを社内に導入したい管理職や経営陣の方におすすめの一冊です。[24]

コーチング・バイブル

コーチング・バイブルは、世界的に権威あるコーチ養成機関であるCTIの創設者をはじめとした複数のプロコーチによる共同著書です。

この本では、コーチとクライアントが協力しながら関係を構築することで、クライアントの本質的な変化を呼び起こす「コーアクティブ・コーチング」が詳しく紹介されています。
実際の対話例も交えて手法が解説されているため、1対1で人材育成を図りたい場合に参考となるでしょう。[25]

また、コーチングの際に役立つチェックリストなどもあるため、コーチングの実務にも役立ちます。

[23]この1冊ですべてわかる 新版 コーチングの基本(Amazon)
[24]図解コーチングマネジメント(Amazon)
[25]コーチング・バイブル(Amazon)

まとめ

コーチングでは、管理職や部下の自発性を向上させることが可能です。
また、経営陣や管理職がコーチングを受けることで、売上向上などの課題を解決できる可能性も高まります。

組織課題の解決に悩んでいる経営者・人事の方は、コーチングの導入を検討してみてはいかがでしょうか。